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2018年12月8日土曜日

タイユバン・ロブションの想い出

恵比寿にあるフレンチの名店 " ジョエル・ロブション " は、その昔 " タイユバン・ロブション " と呼ばれていた。

パリの3つ星レストランであるロブションとタイユバンとのコラボレーションにより実現した夢のレストラン、それがタイユバン・ロブションである。 

恵比寿ガーデンプレイスとウエッティンホテルに隣接するシャトーレストラン " タイユバン・ロブション " は、タイユバンがサービスを、ロブションが料理を担当、パリの2軒の3つ星レストランが共同して営業しているところから、6つ星レストランとして称されていた。 豪奢なシャトーの偉容を誇る建物の店内は1階と2階に大きく分かれており、1階はルイ15世の王女たちの肖像画がかけられた「カフェ・フランセ」、2階は「メインダイニング」。3階はルイ16世紀様式の「個室(サロン)」となっていた。 中に入ると左手にレセプションがあり、コートを預けた後2階へ案内される。 

さすがにタイユバンのギャルソンは気配り、料理を出すタイミングとも最高で、ソムリエのレベルも極めて高かった。 当時、2階のメインダイングをよく利用したが、コースメニューはうろ覚えだが、

 ・黒トリュフ 茸の入ったあつあつのブイヨンと共に
 ・伊勢海老 ラヴィオル仕立てのエテュベ 人参のクーリで
・真鯛 グリエしてグリンピースの葉を添えサラダ風に
・鴨のフォアグラ ポワレに有塩バターで焼いた干柿を添えて
・ラカン仔鳩 ローストにクレソンとほうれん草のムースリーヌ
・神戸牛ロース肉 ガーリック風味 蕪のアンブーレと共に
 ・フランス産チーズ ・ワゴンサービスのデザート ・カフェ といった内容だったように記憶している。

 因みに、フランス料理のコースでは、チーズはデザートの前に出される。 上記のメヌ(フランス語でメニューのこと)の中でも、特に印象に残っている一皿は「真鯛 グリエしてグリンピースの葉を添えサラダ風に」と「鴨のフォアグラ ポワレに有塩バターで焼いた干柿を添えて」である。 特に「真鯛 グリエしてグリンピースの葉を添えサラダ風に」は魚料理では定評があるタイユバンの実力が遺憾なく発揮された一皿。

また、「鴨のフォアグラ ポワレに有塩バターで焼いた干柿を添えて」は、まさに天才シェフ、ジョエル・ロブションの真髄を味わうにふさわしい逸品。この二つの皿を同時に味わえたのは、世界でもタイユバン・ロブションのみ。今思えばなんとも贅沢な話である。 

食事と合わせる酒は、アペリティフはシェリー(アモンティリャード)、食間のワインはボルドー、ポヤック地区の格付け1級であるLatour(ラトゥール)、そしてディジェスティフはシェリー(ペドロ・ヒメネスかモスカテル)というのが通常のパターンだった。 ワインに関しては、基本的に産地と格付けをソムリエに伝え、シャトーに関してはソムリエの裁量に任せることにしていた。 素晴らしい料理と素晴らしいサービス、一流のレストランは舌を喜ばせ、空腹を満たし、心を豊にしてくれる。 

1990年代後半の古き良き時代の思い出。