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2012年8月17日金曜日

知る人ぞ知る中華街の隠れた名店 " 広東家庭料理 愛群(アイチュン) "



正直、このお店だけは教えたくなかった。

近年、新旧交代の波が押し寄せている横浜中華街。老舗は次々と姿を消して行く中、新興勢力が新規コンセプトの店を次々とオープンさせている。

新興勢力は " フカヒレ、 食べ放題、小籠包 " を三種の神器に、庶民の琴線に触れんと攻勢にやっきだが、30年以上も前から中華街に出入りし、古き良き味を知っている身としては、正直複雑な心境である。

そんな中、ひらすら広東家庭料理にこだわり、かたくなにその味を守り続けている小さな店がある。

それが今回ご紹介する広東家庭料理の店 " 愛群(アイチュン) " である。

場所はメインストリートの裏手にあたる開帝廟通りにある。

メインストリートの老舗系飯店と異なり、極めて小さな目立たぬ店構えなので、知らない人はほとんどが素通りしてしまう。

このお店、実は通い始めてかれこれ15年以上になる。

最初は自らの鼻で見つけた(笑)

その日は、娘のパスポートの更新だったのでシルクセンター内のパスポートセンターで手続きを済ませ、ランチで中華街に立ち寄った。

同發新館でランチの後、元町商店街のキャラバンコーヒーでモカ・マタリでも飲んで締めようということになり、香港小路を抜け開帝廟通りに出てふらふらと歩いている時、いきなり1件の小さな店が目に入った。

その時、グルメの直感が閃いた。ビビっときたのだ!

お腹一杯だという娘を「杏仁豆腐だけでいいから」と説き伏せ店内へ。

一階はテーブル席が4つほど。

めちゃくちゃ元気のいいオバサン(このお店の名物ママ。気さくで心配りが細やかで、ともかくいい人)がオーダーを聞きに来たので、看板メニューである「牛バラ飯」と「牛バラソバ」を注文。

娘は食べてれそうもないので、無理をしても二人分を食べる覚悟だった(笑)。

しばらして「牛バラ飯」と「牛バラソバ」がテーブルに置かれた。

                 (牛バラ煮込み)

自慢じゃないが中華街歴30有余年のキャリアから、中華街中の牛バラ飯&牛バラソバは食べ尽くしているが、それはこれまでのものとは何かが違った。そう香りが違うのだ。

中華街の煮込み系料理にありがちな八角の香りが薄いのだ。

早速レンゲを差し込み、肉汁のタレが絡まったご飯とトロットロに煮込んだ牛バラを口に運ぶ。

口に含んだ瞬間、芳醇な肉汁の濃厚な味わいと、まるでよく煮込んだビーフシチューのように、噛めば噛むほどの味わいが増す牛バラの角煮の食感が渾然一体となって脳髄の快感中枢を刺激した。シビれる~(笑)

うま~い!! 思わず叫び出したくなるのを堪え、牛バラソバに箸をつける。

牛バラ飯と同じく、濃厚な肉汁が溶け込んだスープはまさに絶品! 細麺との相性も最高である。

気がつけば、もうお腹一杯と文句を言っていた娘が、まるで悪魔にとり憑かれた映画「エクソシスト」の主人公リーガンのように、一心不乱に牛バラ飯を掻きこんでいるではないか(爆)。

すでに同發新館でランチを済ませたことなどすっかり忘れた食いしん坊親子は、あっという間に料理をたいらげ、食後のデザートの杏仁豆腐を注文したのだった(笑)。

出てきた杏仁豆腐を見てびっくり! 杏仁豆腐の色が白見がかったグレーなのだ。

口に含んで二度ビックリ、甘過ぎないシロップもさることながら、杏仁豆腐からは仄かなアーモンドの香りが漂い、なんとも上品なお味。

その日をきっかけに、娘、カミさん、うちの母親、父親、親戚、母親の友人、娘の友人、こちらの友人と、まさに家族ぐるみ、親戚ぐるみのおつき合いをさせてもらっている。

愛群の凄いところは、牛バラ飯、牛バラソバといった看板メニュー以外でも、何を食べても美味しいという点にある。

特にチャーハンは絶品! まさに「THE チャーハン」である。恐らく中華街一のチャーハンではなかろうか。

シンプルながらも、フライドシュリンプがいい仕事をしている。

これぞ黄金パラパラチャーハンのお手本とも言えるマスターピースである。

                 (チャーハン)

さらに、オレンジなど柑橘系のフルーツを使って作る自家製チリソースのエビチリ、そして " 鳥のカシューナッツ炒め " さらには " 酢豚 " に至るまで、そのすべてが広東料理の基本に忠実に守りながらも、この店独自のレシピでアレンジされたオリジナリティ溢れるものばかり。

味付けもさることながら、特筆すべきはすべての食材が絶妙の食感で調理されていること! エビはプリップリ、鶏肉も弾力性に溢れ、豚肉、牛肉も柔らかくジューシー。強火で短時間で火を通す中華ならではの食感にこだわった調理術はまさに脱帽である。

ああ、書いてしまった、後悔(笑)。

百聞は一見にしかず、ぜひ自分自身の舌で味わってほしい。

       
愛群
横浜市中区山下町138
TEL:045-641-6245
11:30~21:00(20:40L.O)
ランチ営業、日曜営業
定休日:月曜日
(みなとみらい線 元町・中華街駅・3番出口より徒歩6分程度)