2012年3月9日金曜日
クルマの常識ウソ・ホント!?「冷えたエンジンを適温まで上昇させる「暖機運転」はホントに必要か?」
「新車の慣らし運転」と同じように、なんとなく常識として刷り込みされているクルマの取扱いとして、冷えたエンジンを適温まで上昇させる目的で行う「暖機運転」がある。
エンジン本体の金属部分は本来、十分な熱膨張をした状態で正常に作動する設定になっていて、エンジン本体が十分に熱せられない状態のときには、濃い目の混合ガスを供給しないとエンジンが正常に回転しない。このような不安定な状態での走行を避け、エンジンが十分な性能を発揮できる状態まで無負荷状態の空転運転が暖機運転である。
ということで、これも一理あるのだが、最近は暖機運転をすることが罪悪として見られる状況になっている。数年前までは「ガソリンのムダ遣い」、最近では「地球環境を破壊する極悪人」という目で見られる。
そうは思われたくないから、暖機運転なしで、エンジンを始動した瞬間にスタートをする。こんな状況を繰り返すとエンジンの寿命が短くなるのだろうか・・・。この点については、さほど心配することはない。
今の時代のエンジンは、できるだけ早く温度が適温に達するような工夫がされているし、停止状態でエンジンを回転させておくより、実際に走行を行ってエンジンに対する負荷を発生させたほうが早く適温に達することができる。
また、排気ガスを浄化する役目を持った触媒が正常に作用するには、ある程度の温度に達する必要があるため、この面からしても、走行によってエンジンに負荷を与え、エンジンの温度を早く適温に達成させることが地球環境保全につながる。
とはいえ、エンジンの機械部分にはクリアランス(隙間)が設けてあり、エンジンが冷えている状態のときにはクリアランスが大きいので、冷えているときに大きな負荷を与えたり高回転まで回したりすると、エンジン内部機構の磨耗が促進される。これも見逃せない事実だ。
よって結論としては、特に暖機運転をする必要はないが、ヒーターが温まり、水温計の針が80度付近を示すくらいまでの時間は高速走行や急発進などを避けるべき、ということになる。
また、エンジンやミッション各部にオイルが循環するには30秒くらいの時間がかかるので、スタートまでに、これくらいの余裕時間は見る必要がある。
なお、ごく一般的な市街地走行をした場合、ヒーターが暖かい風を送ってくれるまでの時間は、約15分から30分というのが目安。それよりも極端にエンジンの温まり具合が悪い場合には、エンジンの冷却系統をチェックしてみる必要があるかもしれない。
ヒーターが温まる以前に走行が完了してしまうような短距離走行を毎日続けるとか、無駄な暖機運転を繰り返していると、エンジン内部の磨耗が大きくなり、エンジンの寿命が短くなる。だから、日常、こんな走行を繰り返しているオーナーは、時には高速道路を高速走行してエンジンに開放感を与えてやるべきだ。
クルマは、走ることを目的にして造られているものなので、それなりに走らせることが長寿命の秘訣でもある。