2012年2月29日水曜日
クルマの常識ウソ・ホント!?「車検の点検項目で、どこまでクルマのトラブルを未然にチェックできる?
「自動車の使用者は、自動車検査証の有効期間満了後も当該自動車を使用しようとするときには、当該自動車を提示して運輸大臣の行う継続検査を受けなければならない・・・」と、いきなり堅苦しい文句で恐縮だが、これは一般に"車検"と呼ばれている手続きに関する法律の条文である。
車検が法律によって決められているということであれば、「車検に合格したクルマは、国からお墨付きを頂戴した安全車」と思いがちだ。だが、これは大きな勘違い。
車検では、「道路運送車両の保安基準」(以下、「保安基準」とする)に書いてある項目が合否判定の基準になる。簡単にいえば、クルマにはハンドルやブレーキ、ランプ類などが決められた構造や位置に装着されていて、それらが正常に作動しているかどうかについて検査をするのが車検だ。
例えばエンジンに関していえば、プラグが汚れていようと、エアクリーナーが詰まりぎみだろうと、エンジンオイルの量が不足していようと、一切関係ない。エンジンのテストは、排ガスに関する項目だけといってもいいくらいだ。
今の時代、有害排ガスについてはいろいろと問題になっているが、車検で行なわれるのは、COとHCだけ。これは、今どきのクルマではポピュラーな三元触媒システムが装備されていさえすれば、かなり調子の悪いエンジンでも合格してしまうほど大雑把なものでしかない。また、ブレーキに関しても似たようなもので、ブレーキ液がブレーキ機構周辺に漏れていなくて、四輪がロックする状態であれば、ほとんど合格する。
ところが、ユーザーが実際のトラブルとして経験するのは、オルタネーターベルト切れが原因のバッテリー上がりや、ウォーターポンプベルト切れが原因のオーバーヒート。プラグ不良やエアクリーナー詰まりなどが原因になる加速不良やエンジン不調。さらに、ブレーキパッドが限界まで磨耗したときに発生するブレーキ効き不良。マニュアルミッションであれば、クラッチディスク磨耗による走行不能・・・など、まったく車検ではチェックされない部分が圧倒的に多い。
つまり、車検の合否基準になる保安基準の中には、消耗パーツや定期交換が必要なパーツに関する決まりごとは一切含まれていない。
「それじゃあ、困るじゃないの!」ということになるわけだが、実際に作動点検が必要な機構やパーツ類の状態点検に関しては、保安基準とは別の、「自動車点検基準」という決まりによって定められている。
そして、現在は「車検に合格した後で点検を行ってもいい(前車検・後点検)」ということが法的に認められていることからしても、車検は、あくまでも ' 儀式 ' であり、実際のクルマの点検やメンテナンスとは一切無関係なものだということがわかる。