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2012年2月13日月曜日

クルマの常識 ウソ・ホント!?「ディスクブレーキがドラムブレーキよりも多用される理由」


前回書いたように、クルマのブレーキ機構には「ディスクブレーキ」と「ドラムブレーキ」の2タイプがあり、効きという点ではドラムブレーキのほうが優れている。ドラムブレーキには単に摩擦力だけでなくプラスαの作用が発生するからである。

では、なぜディスクブレーキが多用されるようになったのか。それはブレーキが熱の影響を大きく受けることに理由がある。

ドラムブレーキのブレーキ機構は、ブレーキドラムという囲いに覆われた状態になっているので、ブレーキ機構の内部にはまったく風が入ってこない。これに対してディスクブレーキは、ブレーキパッド部分もディスク(ローター)部分も全て開放状態になっており、ブレーキ全体が風で冷やされる。

ブレーキ機構は、タイヤが回転している力を熱に換えることが仕事だから、ブレーキ全体が高温になる。ラリーやレースの写真で、真っ赤になったブレーキローターが写し出されていることも珍しくない。さて、ブレーキ機構に熱が発生すると、ブレーキパッドの摩擦力が低下し、まったくブレーキが効かなくなる。これが「フェード」というブレーキトラブルだ。また、ブレーキ機構の熱によってブレーキ液が沸騰し、ブレーキ液の中に気泡が発生する「ベーパーロック」というブレーキトラブルも生じる。だから、このようなトラブルを防止するには、どうしてもブレーキを冷却する必要がある。

モノを冷却する方法としては、水を仲立ちにする「水冷」と、空気の力を使用する「空冷」の2通りがあるのだが、この2つの方法はエンジンでも使われている。水冷と空冷のどちらが効果的かという点についてはいろいろな判断がある。ホンダの創始者である本田宗一郎氏は「水冷といっても最終的に水を冷却するのは空気なのだから、空冷のほうが優れている」と言い続けたというエピソードもあるが、四輪車用のエンジンにとっては、単なる冷却だけでなく保温の効果もある水冷式を採用することが一般的になっている。

しかし、本題のブレーキに関しては、エンジンに比べて何倍も温度が高くなるから、水などは簡単に蒸発してしまい、使いものにならない。だから、どうしても空気による冷却が必要。そのためには、ドラムブレーキよりディスクブレーキのほうが都合がいい。

ブレーキトラブルとは別に、一般的なブレーキの効き具合に関しても熱の影響を受けることがあり、特に冷えているドラムブレーキは、ちょっとブレーキペダルに足をのせただけで「カックン」という感じのブレーキになる。このような現象に「モーニングブレーキ」などという名前が付くほどの難点だ。

これに対してディスクブレーキのほうは、ドラムブレーキに比べて効きが悪いという点が、逆に"穏やかな効き具合"にもなるため、全温度域で安定したブレーキ性能を発揮するという有利さがある。