2012年2月23日木曜日
クルマの常識 ウソ・ホント!?「ハイグレードのブレーキ液を入れるとブレーキの効きは良くなる?」
ブレーキ液には、「DOT3」とか「DOT4」といった規格が設けられている。これは、エンジンオイルのグレードを表す「SJ」や「SL」などと同じように、ブレーキ液の基本性能を判断するための目安になる。
しかし、ブレーキ液はエンジンオイルと違い、一般ユーザーにとっては馴染みが少なパーツだし、仮に交換するとしてもサービス工場に' お任せ 'になるだろうから、ブレーキ液に関する規格なんて、ほとんど気にしていないユーザーが大半だろう。
とはいうものの、ジムカーナとかラリーなんていうモータースポーツに興味を抱きはじめたときには、ブレーキ液に関する知識が必要不可欠なものになってくる。
ブレーキ液の規格である「DOT」は、アメリカ運輸省を意味する略称であり、規格の細かい内容はアメリカの連邦自動車安全規格であるFMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard)の「№116」で決められている。
日本ではJIS規格として「3種」とか「4種」というブレーキ液の規格があり、これは、3種がDOT3相当品、4種がDOT4相当品という互換性がある。JISとしてのブレーキ液グレード表示は、3種が「BF-3」、4種が「BF-4」という記号によって表されるのだが、一般的にJIS表示は無視の状態に近い。
ブレーキ液のグレード表示は、整備工場でもモータースポーツ車のメンテナンスを行っているショップでも、さらにカーメーカーの資料などでも、DOTの通用度合いが圧倒的に高い。
現在、ほとんどの市販車にはDOT3グレードのブレーキ液が使用されており、一般的な走行であれば、このブレーキ液で問題が発生することはない。だが、モータースポーツ走行のようにブレーキへの負担が大きい走行を連続して行うと、やや問題が発生する可能性がある。
過酷なブレーキングを連続して行うと、ブレーキング機構が冷える暇がない。その結果、ブレーキ液の温度が上昇して沸騰状態になり、ブレーキ液の中に気泡が発生する。ブレー機構は、ブレーキ液が発生する油圧(液圧)によって成り立っているため、液の中に気泡が発生すると十分な圧力を発生することができなくなる。その結果、ブレーキペダルを踏んでも、ペダルがフロア一杯まで入り込んでしまい、まったくブレーキが効かない状態になる。これが、ベーパーロックというブレーキトラブルだ。
ベーパーロックの発生は、沸点の高いブレーキ液を使用することで予防でき、DOT4やDOT5という規格のブレーキ液は、通常使用されているDOT3に比べると沸点が高い。
それなら、ノーマル車にも高沸点タイプのブレーキ液を使用すればブレーキの性能が向上するのか? ということになるが、これは高価な高性能ブレーキ液のムダ遣い。なぜなら、通常のブレーキング状態では、ブレーキ液のグレード差によるブレーキ性能差は発生しないからだ。