2012年2月10日金曜日
クルマ常識 ウソ・ホント!?「ブレーキフルードのランクとその効果」
ブレーキフルードは、アメリカ運輸省が制定したDOTという規格によってランク付けされている。ランクとしては、DOT3、4、5などがあるが、一般的な市販車の大半にはDOT3クラスのブレーキフルードが、メーカーの生産ラインで注入されている。
この標準仕様のブレーキフルードを1ランク上のDOT4タイプにすると、「ブレーキの能力がアップする!」と思いたいが、その可能性はほとんど期待できない。
圧縮性の強い液体をブレーキフルードとして使うと、ペダルの踏み心地にフワフワした感じが出ることもあるが、DOT適合のブレーキフルードであれば、基本的なブレーキ性能は十分に確保されており、DOTグレードによるブレーキの利き具合変化は、ほとんど発生しない。
ブレーキフルードのランク付けは、主に、どれくらい高温度まで沸騰状態にならないかという点と、どれくらい低温度までブレーキフルードとしての性能を発揮できる粘度を保てるかという点を試験して行われる。また、ブレーキフルードは、空気中の湿気を吸収するに伴って沸点が低下する性質があるため、約3.5%ほどの湿気を吸収したときの沸点にも規定を設け、その点に関する試験も行われる。
鍋やヤカンに入れた水が沸騰すると中のお湯が噴出してくるのは、水量が増えたのではなく、お湯の中に気泡が発生したからだ。ブレーキフルードも沸騰すると気泡が発生する。そして、この状態でブレーキペダルを踏んでも、ペダルの力は空気の泡をつぶしているだけだから、ブレーキを作動させるための圧力が発生しない。その結果、ブレーキペダルを踏んでも、ペダルがフロア一杯まで移動するだけで、まったくブレーキが利かない状態になる。これが「ベーパーロック」だ。上級クラスのDOT規格になるほど、ブレーキフルードはベーパーロックが発生しにくい性質を持っている。
しかし、実際のブレーキトラブルの多くはベーパーロックが発生する以前の時点で、「フェード」という現象が発生することによる。これは、摩擦材であるブレーキパッドが過熱された結果、ブレーキパッドの摩擦能力が低下し、ブレーキペダルを踏んでブレーキ機構に圧力を発生させてもブレーキが滑ってしまい、制動能力を発生しなくなってしまう現象だ。
フェード状態になるとブレーキ機構の熱が上昇する。フェードが発生するブレーキ機構というのは、ブレーキ機構を冷却する能力が低いということでもあるので、その点でベーパーロック現象の発生を助長する。つまり、基本的には、特殊なブレーキパッドやブレーキフルードを使用せずとも温度が上昇しないようなブレーキ機構を備えているクルマが偉いということ。
だから、上級グレードのブレーキフルードを使用している、なんてことは、ブレーキの基本性能面から見ると、あんまり自慢になることではない。
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