2012年6月3日日曜日
エンジンチューニングの基礎知識 「ボアアップ」
過給器を持たない自然吸気エンジンの場合、排気量がそのまま出力性能に影響する。
これは、自然吸気エンジンがピストンが下降する際に生じる負圧でしか空気を取り入れる事ができないためで、故にピストン径やストロークの大きい、つまりは排気量の大きいエンジンほど出力向上には有利なのである。
自然吸気エンジンをパワーアップする際に、最も手っ取り早い方法として使われるのが、ピストン径を拡大する事により排気量を増大させるボアアップというニューニングテクニックである。
ボアアップのボアとはピストンの内径を意味する言葉だ。例えば80mmの内径のピストンを85mmのものに交換すれば単純に排気量は大きくなる。
これは注射器を例に考えれば安易に理解できるだろう。内容量が同じなら、ピストンの内径が細くシリンダー長が長くても、あるいはその反対に内径が太くてシリンダー長が短くても何ら変わりはない。
しかし、エンジンのシリンダー径は組み込まれるピストン径に合わせて設計されている。そのため、設定値よりもオーバーサイズのピストンを組み込み場合には、それに合わせてシリンダー径も拡大する必要がある。その作業をボーリングという。
ボーリングはピストンを組み込むシリンダーブロックの内壁を削り、新たに組み込むピストン径に合わせる作業で、ボーリング機と呼ばれる専用の機械を使って行われる。
さらに、ボーリング作業の仕上げとして行われるのがホーニングという作業である。
ホーニングは、ボーリングにより削られたシリンダーのな内壁部分を滑らかに磨き上げる作業で、ボアアップの最後の仕上げとも言える工程だ。
ボアアップはかつては極めて一般的なチューニング手法であり、チューンアップのみならず、くたびれたエンジンのオーバホールなどでも広く使われた。
一昔前のエンジンはシリンダーブロック自体の厚みに余裕があったため、ある程度削っても特に大きな問題が生じる事は少なかった。
だが最近のエンジンは省エネと軽量化のために各気筒間のシリンダー隔壁は極端に狭くなっており、ボーリングするゆとりが殆どないものが多い。
しかし、現在でもボアアップは行われている。現在のボアアップはかつての様に極端なものではなく、メーカーが補修用として指定したピストンサイズを組み込む程度のものとなっている。それでも排気量は確実にアップするのでエンジンにゆとりが生まれ、ポテンシャルは向上する。
ボアアップ後の注意点として大切なのは、必ず一定期間の慣らし運転を実施するという事だ。これを怠るとエンジンの寿命を極端に短くする事にもなりかねない。
特に組付け直後の全開走行は焼きつく危険性があるので厳禁だ。
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