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2012年6月11日月曜日

NISSAN BNR32 SKYLINE GT-R 備忘録 ⑪

30有余年に及ぶロケンローな我がスポーツカー人生の中でも一際輝きを放つ一台のクルマがある。

自らの所有したクルマとして、またモーター・ジャーナリストとして、そして一人のエンスジャストとして、深く心に刻まれ生涯忘れ得ぬクルマ。

そのクルマとは " 日産BNR32型スカイラインGT-R " である。

最高のクルマに出会えた喜びと共に過ごした日々を回顧し、恐らく不定期とはなるだろうが、当時の取材メモを参照しながら、その開発経緯、メカニズム、エピソードなどを備忘録的に書き綴って行きたいと思う。



デザイン面だけでなく、ボディ本体の設計も進行していた。

GT-Rのボディは第二車体設計課が担当していたが、高い剛性を確保しながらも大幅な軽量化を実現するという二律背反のテーマに大いに頭を悩ませていた。

この時大活躍したのがS13シルビアから本格的に導入されたスーパーコンピューターによる解析である。解析によりボディ各部の構造が最適化され、ボディ剛性を低下させることなく大幅な軽量化を実現した。

軽量化と高剛性の両立のため、ボディ剛性とは無関係な部分に関しては積極的に新素材が導入された。

具体的にはボンネットと左右フロントフェンダーのアルミ化が挙げられる。これによりおよそ12kgの軽量化に成功している。

アルミは伸びの比率が悪く、鉄に比べプレスによる加工が難しいという欠点があったものの、アルミの材質自体の改良と最適なプレス条件を研究することによりクリアされた。

GT-Rはドライバーとのインターフェスとなるインテリアに関しても徹底的にこだわっているのが特徴である。

インストゥルメントパネルに至る連続した有機的なデザインは、主役であるドライバーを完全に包み込み、マシンの一部と化す。

視認しやすいメーターレイアウトたスイッチ類の操作感は人間工学に基づき設定された。

インテリアの中でも特に秀逸なのが車体設計部第二内装設計課がGT-R専用に開発したシートである。

専用シートの設計にあたり、担当者はそのベースをかつてWRCで活躍した240RSに採用されたバケットシートに求めた。そしてそれに一般走行における居住性を高次元でマッチングさせようと試みたのである。

GT-Rのシートということで強い横Gの対するホールド性を優先させ、リクライニング機構以外には一切調整機能を排除している。

さらに、独自のインバース形状はドライバーに違和感なくフィットして完璧にサポートするので、長時間の運転でも疲労が少ないのが特徴である。