それは忘れもしない1971年(昭和46年)の秋のことだった。
のどかなある日曜日。
その日、駅まで東スポ(爆)を買いにいった父親が、帰宅するなり家族を茶の間に集めた。
何事かと行ってみると、食卓の上に白い逆円錐形の容器に英文が記載された謎の物体がポツンと置かれていた。
「ついにここまで来た。これからは宇宙食の時代だ!」
当時、現役の教師であった父親は興奮気味に熱弁をふるった。
ひとしきりまくし立てた父親は、母親にお湯を沸かすよう指示を出し、自らは容器の外側にシュリクされたビニールを剥がし始めた。
やがてお湯が湧き、半開きに開かれた紙蓋の中に熱湯が注がれ素早く塞がれた。
父親は腕時計を睨み、正確に3分間を計測する。
家族全員が見守る中、緊張の3分間が経過した。
「今だ!」父の号令いっか紙蓋が剥がされた容器の中にはエビ、玉子、四角い肉片が色鮮やかにひしめいていた。
「お~」家族の間からどよめきが起こった。
おもむろにフォークを差し込み中身を口に運んだ父親は、怪訝そうな顔をしてこう言った。
「宇宙食ってラーメンみたいな味がするぞ!」。
カップヌードル事始めの一席、お後がよろしいようで(笑)。