2010年9月16日木曜日
究極のFRマシン “ ポルシェ944ターボ ”
ポルシェ944ターボは、BNR32型スカイラインGT-Rの開発陣が、そのハンドリングの指針としたクルマである。
BNR32型スカイラインGT-Rの開発が始まる直前、栃木県黒磯市にある日産栃木研究所(通称・黒磯)に伊藤修令主管を筆頭とする各部門の技術陣が集まり、用意された様々なスポーツカー&スポーティカーを比較試乗した。
その目的は、8代目スカイラインのフラッグシップモデルであるGT-Rのあるべき姿、目指すべき操縦性を模索するためだった。
集められたクルマは、ポルシェ、BMW、アウディ、メルセデス・ベンツ、アルファロメオいった、ヨーロッパの主だった自動車メーカーのスポーティバージョンから、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにまで及んでいた。
その比較試乗会において、誰もがその走りの楽しさ、操縦性の素晴らしさを賞賛したのがポルシェ944ターボであった。
GT-Rの目指すべき方向性はその時に決まった。それは、”「究極のFR」と謳われたポルシェ944ターボのハイレベルなハンドリング性能を基本とし、それをさらに進化させながらも、決してドライバーの負荷を高めない、至高の操縦安定性能を目指す”というものだった。
「究極のFR」944ターボは、1985年にデビューしたポルシェのFRスポーツカーである。
ポルシェ944ターボの最大の特徴は、エンジンとトランスミッションをフロントとリヤに振り分け、トランスミッションとディファレンシャルを一体化させた「トランスアクスル」を採用している点である。そのため、944ターボの前後重量バランスは、50:50の理想値い近いものとなっている。
また、リヤへの重量配分により、駆動輪の接地荷重が高まり、通常のFRに比べトラクション性能も大幅に向上させている。
搭載されるパワーユニットは、ポルシェが自社開発した2479ccの水冷4気筒SOHCエンジンに、KKK社製のターボチャージャーを装着したM44/51型エンジンで、最大出力220HP/5800rpm、最大トルク33.6kg-m/3500rpmを発揮する。
サスペンションは、フロントがマクファーソン・ストラット式にコイルスプリング、リヤはトレーリング・アーム式にトーションバーを組み合わせたものをそれぞれ採用している。
ポルシェのブレーキには定評があるが、944ターボもその例外ではない。944ターボのブレーキシステムは、ポルシェが設計し、イタリアのブレンボ社が製造した4ポッドキャリパーが奢られている。その効きは強力で、200kmオーバーからの急減速にも余裕で対応できるポテンシャルを秘めている。
ポルシェ944ターボは、走る、曲がる、止まる、という、クルマの3大要素が高次元で融合されたクルマだった。
「究極のFR」の称号は伊達ではない。