1976年に製作された幻のショートムービー “ C'etait Un Rendezvous(ランデブー)”
早朝のパリ市内をフェラーリ275GTBが全開で駆け抜けるというこの作品は、全編がフェラーリ275GTBのフロント部分に据え付けられたカメラの迫力溢れるオンボード映像と、V12エンジンが奏でる官能的なフェラーリサウンドのみで構成さている。
この作品は「男と女」の監督として余りにも有名なフランス映画界の巨匠クロード・ルルーシュが製作・監督を手掛けた異作。
本編に登場し、パリ市内を爆走するのは当時ルルーシュ自身が所有していたフェラーリ275GTB。
そのステアリングを託されたのは1955年のモナコGPにおいてフェラーリで優勝を飾ったF1ドライバーのモーリス・トランティニアン(と言われている)。因みにトランティニアンは50年代を代表する名ドライバーの一人である。
しかも、驚く事に撮影に際しては当局の撮影許可を取得せず行われた(恐らく申請しても危険と判断され却下されていただろう)。
つまり、F1ドライバーによるパリ市内ゲリラ暴走である。
これ以上の臨場感と緊迫感はあるまい。もちろんこの時代、CGの類は一切ない。すべてがぶっけ本番。
パリ市内を走った経験がある方ならおわかりかと思うが、いくら早朝とは言え、あの交通環境、あの路面を、あの狭い道をあのスピードで駆け抜けるのはまさに狂気の沙汰である(あのが多くてすみまんせん)!
撮影後、ルルーシュ監督はパリ市警に逮捕されたというオチがつくが、ドライバーはお咎め無しだったらしい。
' Rendezvous (ランデブー)'というシャレたタイトルの意味は本編の最後で明らかになる。