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2010年9月26日日曜日

1986年 ファット・ギジット怪異譚


1986年、それは自分のバスフィッシング人生最良の年である。

偶然購入したファット・ギジットというソフトルアーが、神の御業の如き数々の奇跡を起こしたのである。

ファット・ギジットは、チューブベイトに分類されるソフトルアーで、その形状からスクイッド(イカ)タイプと呼ばれるものだ。

セットップは簡単。ファット・ギジットの頭に、1.5gほどのジグヘッドを取り付けるだけ。ライトリグなので、ワイドスプールのスピニングリールと、ティップが敏感な5.5ft~6.0ftのロッドとの組み合わせがベストタックルとなる。

ファット・ギジットを初めて購入したのは、東急池上線の蓮沼駅近くにある「バスメイト」だった。

バスメイトは、JBTAの設立にも携わったバスフィッシング界の重鎮、徳永健三氏が経営する超有名プロショップで、80年代を代表するバストレンドの発信基地だった。

各色5~6本に小分けされ販売されていたファット・ギジットの中から、「くすんだピンクに銀ラメ」と、「黒にシルバーに銀ラメ」、そして「グリーンに銀ラメ」の計3種類をジグヘッドと共に購入した。

その中の一つ、「くすんだピンクに銀ラメ」に ' 神 ' は宿っていた。

購入した翌日の夜、バスフィッシングを始めて間もない友人と津久井湖の沼本ワンドにナイトゲームに出かけた。

漆黒の闇の中でキャスティングを繰り返すこと小1時間、いきなり友人のロッドが満月のように絞り込まれた。

デカい!

オカッパリ、しかも6ポンドラインという絶体絶命の状況だったが、なんとか、だましだまし岸まで引き寄せ、ハンドライディングに成功。

拳がスポッポリと入ってしまうほどの巨大な口は、まるで鯉のぼりのようだった。メジャーで計ると、なんと53cmのランカーバス。津久井湖の歴代ランキングでもトップ10に入るであろう大物である。

その時のバスは剥製にされ、現在でも友人宅のリビングの壁に飾られている。その巨大な口には「くすんだピンクに銀ラメ」のファット・ギジットがぶら下がっている。

奇跡はさらに続いた。ところは同じ津久井湖ポイントは津久井観光のボート乗り場付近のオカッパリ。

日曜日、繰り出した沢山のアングラー達で賑わう岸辺、超ハイプレッシャーの状況下にも関わらず、なんと第一投目に35cmがヒット。リリースしてキャストすると再びヒット。周囲が唖然とするなか、連続ヒットは5投目まで続いた。

そして、クライマックスとも言える奇跡が、ゴールデンウィーク直前の山中湖で起きた。ポイントは平野ワンドのボート乗り場付近のオカッパリ。

当日は、早朝に河口湖のハワイ前(ボート屋の名前。ワイハの事ではないww)のオカッパリを攻め、レーベルのジョインテッドミノーで30cmクラスのバスを2匹ゲットしていた。しかし、午前8時を過ぎたあたりから強風が吹き始めたため、山中湖へ移動する事となった。

途中、早めのブランチをとり、山中湖へ到着したのは午後1時頃。普通であれば、とっくにゴールデンタイムは終わっている時間帯だが、冗談半分で「くすんだピンクに銀ラメ」のファット・ギジットをセットして投げてみた。

すると、第一投目から水面が炸裂し、25cmくらいの小振りのバスが手元に飛んできた。すでに何度もファット・ギジットの威力を目の当たりにしてきたため、その時は別段特別な感動も湧かなかった。しかし、それはその後に起きる奇跡のプロローグだった。

第二投目、再びヒット。五投目まではいつもの事と思っていた。しかし、五投目以降もその勢いは止まらなかった。いわゆるひとつの「入れ食い」状態が延々と続いた。パチンコで言えばフィーバー連チャン状態が、延々と2時間近くも続いたのだ!

恐らく、気力があればまだまだ続けられたと思うが、連続ヒット100匹目を越えた時点で疲れ果てた。ハンドランディングの繰り返しで、右手の親指の腹はバスの下顎の歯でザラザラになり、キャスティングを繰り返した右腕は軽い腱鞘炎を起こしていた。まさに「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」状態(笑)。

30分ほど休憩し、さすがにもう終わりだろうと思いつつ、再度キャスティングしたみた。フォーリングさせずにトップウォーターを滑らせながらタダ引きしていると、岸から5メートルほどの沖合で、なんと、まるで映画「ジョーズ」のホオジロザメの如く背びれを水面に露わにした2匹の大型バスが争うように追って来るではないか!

そのうちの一匹がヒット。それまでの平均サイズ(25cm~35cm)の時とは全く異なる重みを右腕に感じた。上がってきたのはなんと45cmのビッグワン。大型バスが少ない山中湖ではトロフィーザイズのバスである。

口腔内の薄皮一枚に、「くすんだピンクに銀ラメ」のファット・ギジットとジグヘッドが、かろうじて引っかかっていた。暫し茫然としていると、周囲のギャラリーから拍手と歓声が沸き起こった。

この魔法のルアーとも言えるファット・ギジット。実は「くすんだピンクに銀ラメ」以外のものには一切ヒットがなかった。

なぜかその年のバスは、ファット・ギジットの「くすんだピンクと銀ラメ」にのみ激しい反応を示したのである。

この奇跡とも怪異現象とも思える現象は、1986年のシーズン中ずっと続いた。しかし、不思議な事に、翌年になると、「くすんだピンクに銀ラメ」は、どこのバスポンドでもまったくヒットしなくなってしまった。

人間、長く生きていれば不思議な事の一つや二つはあるものだが、「神通力」とも言える不思議な力を持った「くすんだピンクと銀ラメ」のファット・ギジット怪異譚はその中でも白眉とも言える体験であった。








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