2010年9月17日金曜日
BMW E30型M3
2代目3シリーズとなるE30型をベースに、ツーリングカーレース参戦のホモロゲーション取得を目的に開発されたのがこの初代E30型M3である。
モータースポーツを意味する「 M 」を冠に頂くE30型M3は、当時盛んだったグループAクラスを中心に、世界各国のサーキットで暴れまわった。
“BMW M Power”と刻印されたヘッドカバーを持つDOHC2.3リッター4気筒エンジンは、M1に搭載されたM88型DOHC6気筒3.5リッターエンジンと全く同一の93.4×84.0mmのボア×ストロークを持つ。簡単に言えば、M88型エンジンの2気筒分をカットして4気筒にしたものだ。排気量は2302ccで、最高出力200PS/6750rpm、最大トルク24.4kg-m/4750rpmを絞り出す。
ボディ前後には巨大なブリスターフェンダーが装着され、リアウィンドーフレームやトランクリッドも特別にデザインされた樹脂製のものに変更するなど、まさにホモロゲーションモデルそのもの。
2.3リッターという排気量は、当時のグループAのレギュレーションで、ディビジョン2にカテゴライズされるものとして設定されたが、1988年のM3エボリューション(最高出力が200PSから220PSへとパワーアップ)を経て、1990年にはレギュレーションの変更に伴い、排気量を2.5リッターにアップした最高出力238PSのM3スポーツ・エボリューションが登場した。
日本では、1988年からはカタログモデルとなったM3だが、アメリカ仕様とと日本仕様は、H型パターンのZF社製マニュアルトランスミッションが搭載されていた。しかし、ヨーロッパ仕様には、インターナショナルレーシングパターンのゲトラグ社製クロスレシオミッションが搭載された。
E30型M3は、レーシングフィールドのみならず、ラリーフィールドでも大活躍した。特にターマックイベントにおいては、FR特有の軽快なハンドリングを武器に、4WDのランチャ・デルタ・インテグラーレHFをも凌駕する走りを見せた。
1987年のWRCツール・ド・コルスでは、英国のプロドライブ社がチューニングしたE30型M3を駆るベルナール・ベギンが見事に優勝を飾っている。
この映像は、イギリスのマン島の公道を舞台に熾烈なバトルが展開される伝統のイベント、「マンクス・インターナショナルラリー」のもので、プロドライブチューンのE30型M3をドライブしているのは、当時ERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)を中心に活躍していたベルギー人のトップドライバー、パトリック・スナイヤーである。
吹け切ったMパワーユニットの咆哮と、2WDとは思えないトラクション、そして軽快なハンドリングは、紛れもなくスポーツカーそのものである。