E38A型ギャランVR-4 RSに乗っていた時、ターボチャージャーのウェイストゲートバルブをコントロールするアクチュエーターが壊れ、過給圧が制御不能となるトラブルに見舞われた事がある。
アクチュエーターとはウェイストゲートバルブの閉開を行う装置で、アイドリングや低回時など排気ガスの流速が遅い時は内部に組み込まれたダイアフラムスプリングにより閉じた状態となっている。
エンジンの回転が上昇して排気ガスの流速が早くなり、過給圧が設定値に近づくと、ダイアフラムスプリング縮み、ウェイストゲートバルブに連結したバーが動いてウェイストゲートバルブが開く。そして高まった排気ガスを別のルートへとバイパスする。こうしてターボチャージャーの過給圧は設定値に保たれる仕組みとなっているのである。
その重要なアクチュエーターが壊れたのである。しかも突然に!
それは取材に向かう中央高速道路上で起こった。
甲府インターを過ぎたあたりから、一週間ぶりに乗った我がE38A型ギャランVR-4RSがやたら速いのに気づいた。
まるで車重が軽くなったような軽快感! ナチュラルブーストアップ?? ラッキー(笑) しかし世の中そんな美味い話はない。それが異常である事がすぐに判明した。
E38A型ギャランVR-4RSにはオイルやケミカル用品のテストのためラムコ製の「油温」、「油圧」、「ブースト」の各メーターを取り付けていた。そのうちの一つの針の振れが、いつもよりもやたらと大きいのに気づいた。
それはブース計だった。アクセルを踏み込むたびに針が1.5kgまで刻まれた表示板の目盛を振り切る勢いで動いていたのだ!
ありゃりゃ、こりゃヤバイ! エンジンブローしちまう!! 一瞬背筋が氷ついた。
しかし、4G63型エンジンのコンピューターはエンジン保護のため、過給圧が1.3kg以上になると自動的にブーストカットが入るようプログラミングされていた。
そのためタフな4G63型エンジンは何とかその日の行程を乗り切った。
手動(足動?)でブース圧のコントロールは不可能に近い、ちゅうか足首が引き攣った。その時、いかにターボがいい加減な装置であるかを思い知った(笑)
翌日、日頃から取材や現場でお世話になっていた千葉県印旛郡にあるラリーショップ・テンダーの三谷氏に電話して状況を説明した。
恐らくアクチュエーターのトラブルだろうとの事だったので、大至急純正パーツを取り寄せてもらい、その日の夜にテンダーまでクルマを持っていった。
点検の結果、睨んだ通りアクチュエーターのトラブルである事が判明した。
ウェイストゲートバルブを閉開するコントロールロッドのジョイント部分は錆びてスタック(膠着)していたのだ。
これじゃ過給圧が上昇してもバルブは動かない。早速新品に交換して一見落着と相成った。
因みに、テンダーの三谷氏によればアクチュエーターロッドが膠着して動かなくトラブルは大型のアンダーガードでエンジン下部を覆ったラリー車に多く見られるとの事だった。
アンダーガード内部に籠った湿気と熱で錆びの発生が促進されるのがその原因らしい。
しかし、いくらコンピューターによるブーストカットが入るとは言え、過負荷な状態で300km近い距離を走り抜いた4G63型エンジン、本当にタフなエンジンだった。